現代社会において、無線通信は私たちの生活に欠かせないものとなっています。
スマートフォン、テレビ、ラジオ、インターネットなど、様々な場面で無線通信が使われています。
しかし、その一方で、違法な無線通信、いわゆる「違法無線」が社会に悪影響を与えていることも事実です。
□違法無線が及ぼす影響とは
違法無線とは、電波法で定められたルールに違反して行われる無線通信のことです。
具体的には、免許を受けずに無線機を使用したり、許可された周波数帯以外で無線通信を行ったり、出力制限を超えた無線機を使用したりする行為などが挙げられます。
違法無線は、テレビやラジオの受信障害、通信機器の誤動作、さらには重大な事故につながる可能性も孕んでいます。
例えば、違法無線機から発せられる電波が、テレビやラジオの受信周波数と重なる場合、受信画面や音声が乱れることがあります。
また、無線通信の電波は、医療機器や航空機などの重要な設備にも影響を与える可能性があり、深刻な事故を引き起こす可能性も否定できません。
特に、近年増加しているドローンは、違法無線との関連性が指摘されています。
ドローンが違法無線を使用して飛行した場合、航空管制システムとの干渉や、墜落による人的被害が発生するリスクが懸念されます。
違法無線機は、安価で入手しやすいという側面も持ち合わせています。
そのため、手軽に無線通信を楽しみたいという気持ちから、安易に違法無線機を使用してしまう人が後を絶ちません。
しかし、違法無線機を使用することは、決して許される行為ではありません。
違法無線は、電波法違反というだけでなく、深刻な被害をもたらす可能性があることを認識することが重要です。
□不法無線局の種類と実態
不法無線局は、その目的や使用される無線機のタイプによって、様々な種類に分類されます。
ここでは、代表的な不法無線局の種類とその実態について詳しく解説していきます。
1: 不法市民ラジオ
不法市民ラジオは、アメリカで販売されていた市民ラジオを、日本国内で違法に使用する無線局です。
かつては、アメリカで普及していた市民ラジオは、安価で入手しやすいことから、日本でも人気を博していました。
しかし、アメリカの市民ラジオの規格が変更されたため、日本国内では使用できなくなりました。
それでも、一部の業者によって、アメリカ製の市民ラジオが日本国内に密輸され、違法に販売されていました。
これらの違法市民ラジオは、高出力で、多くのチャンネルを使用できるという特徴を持つことから、一部の人々によって違法に利用されていました。
2: 不法パーソナル無線
不法パーソナル無線は、許可された周波数帯以外で、または許可された出力制限を超えて、パーソナル無線を使用する無線局です。
パーソナル無線は、かつて、手軽に無線通信を楽しめることから、多くの一般市民に利用されていました。
しかし、一部のユーザーが、許可された範囲を超えて、無線機を使用したり、改造したりすることで、不法な無線通信が行われるようになりました。
これらの不法パーソナル無線は、他の無線通信を妨害したり、盗聴の対象となる可能性もあります。
3: 不法アマチュア無線
不法アマチュア無線は、アマチュア無線免許を取得せずに、無線機を使用する無線局です。
アマチュア無線は、無線通信の技術向上や、趣味として楽しむための無線通信です。
アマチュア無線免許を取得するには、無線通信に関する知識や技術を習得し、試験に合格する必要があります。
しかし、一部の人々は、免許を取得することなく、安易に無線機を使用し、違法な無線通信を行っています。
不法アマチュア無線は、他の無線通信を妨害したり、公的機関の通信を妨害する可能性もあります。
特に、消防や警察が使用する周波数帯に近接した周波数帯を使用した場合、救急隊や警察の活動に支障をきたす可能性もあります。
不法アマチュア無線は、近年、インターネットを通じて、簡単に違法無線機を入手できるようになったことから、増加傾向にあります。
□違法無線機使用の危険性
違法無線機を使用することは、電波法違反というだけでなく、様々な危険性も孕んでいます。
違法無線機によって、どのような危険性があるのか、具体的な事例を挙げて解説していきます。
1: 通信妨害
違法無線機から発せられる電波は、他の無線通信を妨害する可能性があります。
例えば、違法無線機が、携帯電話やインターネット回線で使用される周波数帯と同じ周波数帯を使用した場合、これらの通信が途切れたり、速度が遅くなったりすることがあります。
2: 盗聴
違法無線機は、盗聴の道具として使用される可能性もあります。
違法無線機には、盗聴器としての機能が搭載されているものもあり、知らないうちに、会話やデータが盗聴されている可能性も考えられます。
3: 交通機関の混乱
違法無線機は、航空機や船舶の通信を妨害する可能性もあります。
例えば、違法無線機が、航空管制システムで使用される周波数帯と同じ周波数帯を使用した場合、航空機の離着陸や飛行に支障をきたす可能性があります。
また、船舶の航行を妨害する可能性もあります。
4: 個人情報漏洩
違法無線機は、個人情報の漏洩にもつながる可能性があります。
違法無線機を使用して、個人情報を含むデータを送受信した場合、第三者に情報が盗み見られる可能性があります。
□違法無線に関わる場合の罰則
違法無線機を使用したり、販売したりした場合、電波法違反として刑事罰が科せられます。
罰則は、違法行為の態様によって異なりますが、重い場合は、懲役刑と罰金の両方が科せられる可能性もあります。
電波法違反の罰則は、以下のとおりです。
1: 無線局の設置、運用等の許可を受けずに無線設備を使用した場合、または許可された範囲を超えて無線設備を使用した場合は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金
2: 無線設備を不正に改造した場合、または不正な無線設備を販売、譲渡、または貸与した場合、5年以下の懲役または100万円以下の罰金
3: 違法無線機を使用して、他の無線通信を妨害した場合、または他の無線通信を妨害するおそれのある行為をした場合は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金
4: 違法無線機を使用して、盗聴を行った場合は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金
違法無線機を使用したり、販売したりすることで、経済的な利益を得ようとした場合は、さらに重い罰則が科せられる可能性があります。
違法無線に関わる行為は、決して軽い罪ではありません。
違法無線に関わることで、刑事罰を受けるだけでなく、社会的な信用を失う可能性もあります。
□まとめ
違法無線は、テレビやラジオの受信障害、通信機器の誤動作、さらには重大な事故につながる可能性も孕んでいます。
また、不法無線局は、不法市民ラジオ、不法パーソナル無線、不法アマチュア無線など、様々な種類が存在し、それぞれの特徴や、なぜ違法とされているのかを理解することが重要です。
違法無線機は、電波法に違反しているだけでなく、通信妨害、盗聴、交通機関の混乱など、様々な危険性があることを認識しなければなりません。
違法無線に関わる行為は、刑事罰を受けるだけでなく、社会的な信用を失う可能性もあることを理解しておくべきです。
安全な無線通信環境を守るためには、一人ひとりが違法無線に関する知識を持ち、違法無線に関わる行為をしないように注意することが大切です。
